そのAI回答、満足してますか? 〜応対自動化の成否を分ける「ナレッジの構造化」〜

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執筆者船井総研 プロシード事業部
コラムテーマナレッジマネジメント
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近年、コンタクトセンター業界では生成AIなどのテクノロジー導入が急速に進んでいます。「チャットボットによる顧客対応の自動化」や「FAQ検索などのオペレーター支援」など、AI活用への注目度は年々上がっています。しかし、顧客接点の最前線であるコンタクトセンターでの本格的なAI活用は、まだ「これから」というのが実情です。

本コラムでは、コンタクトセンターのSVや経営層の皆様へ向けて、AI導入を成功に導く「ナレッジの構造化」と、世界標準のナレッジマネジメント手法「KCS」について分かりやすく解説します。

1. AIを導入する「だけ」では魔法は起きない

「最新のAIを導入したのに、的を射ない回答(ハルシネーション)ばかりする」。こんな悩みをよく耳にします。AIシステムは「導入した時点」で自動的に賢くなるわけではありません。

AIの回答精度を左右するのは、システムそのもの以上に、読み込ませる「データセットの質」が重要です。ビジネスの変化に応じて変わり続けるサービスに対して、データセットが数ヶ月前も放置されていると、AIは古い情報に基づいた「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」を連発し、ユーザーの期待に応えきれなくなってしまいます。AIソリューションの導入は、実はゴールではなく「始まり」にすぎないのです。

2. AIが混乱する原因「ノイズ」とは?

データセットの重要性を理解する上で抑えておくべきポイントとして、一般的な生成AIの回答を作る仕組みについて理解しておきましょう。AIは人間の言葉や文章を「意味」で理解するのではなく、「トークン」と呼ばれるパズルの最小ピースに言葉を分解し、言葉が隣り合う確率を計算しています。

ここにCRM(応対履歴)の生データをそのまま学習させるとどうなるでしょうか。「昨日、田中さんからパスワードロックの問合せがあった。会議があるので折り返しを希望…」といった生の記録には「会議があるので折り返しを希望」などといった、そもそもの質問に対する問題解決には不要な「ノイズ」が大量に含まれています。AIはこれらの不要な言葉まで関連性を計算してしまい、本当に大切な因果関係を見失い、ハルシネーションの発生につながってしまうのです。

3. 回答精度を劇的に上げる「ナレッジの構造化」

この悲劇を防ぐのが、「ナレッジの構造化」です。CRMに記載されたお問合せ情報をもとにナレッジを作成するには、ノイズが多すぎるのです。このような複雑な文章からノイズを削ぎ落とし、本来必要な情報、言葉だけを抜き出してナレッジを作成します。

例えば、「パスワード入力を誤り、ログインがロックされた」という【原因】に対し、「パスワードリセットのメールを送信する」という【解決策】だけを記入した『一問一答形式』に整えます。さらにナレッジに対するAI検索の精度を高めるために、ナレッジに「利用環境」などといった補足情報を追記する事も重要です。

これにより、AIは重要な因果関係にのみ計算リソースを集中でき、ハルシネーションを防止できます。ノイズのない構造化されたデータこそが、AIを「最強の頭脳」に変える事が出来るのです。

4. 現場がAIを育てる仕組み「KCS」

では、この構造化されたデータを誰が作り、どうやって日々最新の情報に保つのでしょうか。その答えが、ナレッジマネジメントの国際標準フレームワーク「KCS(Knowledge-Centered Service)」です。

(出典)HDI-Japan ナレッジセンターサービス(KCS)

KCSでは、一部の担当者が独自にFAQを作るのではなく、日々稼働するセンターに従事しているオペレーター自身がナレッジを作成・更新し続けます。検索して情報が古ければ修正し、無ければ作成する。オペレーターが日々の応対の中で会話している「お客様の言葉」でナレッジを作っていくことを重視している為、新人でもお客様との会話の言葉で検索でき、公開されたFAQにおいても、お客様自身が検索しやすく、理解しやすいナレッジが蓄積されていきます。


ただし、KCSを組織に定着させるにはツールだけでなく「適応できる組織作り」が大前提です。ナレッジへの貢献度を評価する仕組みや、KCS委員会などの横断的な運用体制を整えることがKCSを実現する上で最も重要な要素になります。


おわりに:オペレーターは「価値創造のクリエイター」へ

KCSが実現された組織では、AIの精度向上だけでなく、オペレーターの業務満足度も高めます。自分の書いたナレッジがAIの学習データとなり、会社全体への貢献につながることで、オペレーターは「受け身」から「価値創造のクリエイター」へと進化します。

もしAIの回答精度に不満があるなら、システムを変える前に「データの構造化」と「KCSによる組織作り」に着手してみてはいかがでしょうか。それが、AI導入を真の成功に導く最も確実な道です。


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執筆者 : 船井総研 プロシード事業部

船井総研のプロシード事業部は、コールセンターおよびCX(顧客体験)マネジメントに特化した経営コンサルティングを行っております。グローバル基準の評価手法や豊富な改善ノウハウを武器に、企業の顧客エンゲージメント向上と業務効率化を支援いたします。コンタクトセンターの運営や顧客満足度に関するお悩みを幅広く解決いたしますので、是非お気軽にご相談ください。